通信制高校に偏差値はある?入試で落ちるケースと学力検査を課す学校
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「通信制高校 偏差値」で検索すると、学校名の横に数字が並んだ一覧が出てきます。一方で「通信制高校に入試はない」と書いている記事もあり、どちらを信じればいいのか分かりにくい状態です。
この記事では、偏差値という数値がどこから来るのかをたどったうえで、高校入試の根拠になっている条文と、実際に学力検査を行っている学校の募集要項を確認します。条文と数字は2026年8月13日に一次情報で確認しました。
結論
通信制高校の偏差値が見つからないのは、学校が公表を渋っているからではありません。偏差値は模擬試験を実施する民間業者が算出する数値で、学力検査で合否を決める入試がないところには、模試の得点と合否を突き合わせる材料がありません。数値が存在しないので、比較の物差しにも使えません。
一方で「通信制高校に入試はない」も正確ではありません。学校教育法施行規則第90条第2項は学力検査を「行わないことができる」と定めているだけで、禁じてはいないからです。実際、東京都立一橋高等学校(通信制課程)は学力検査に基づいて選考しており、募集人員も決まっています。落ちる可能性がどこにあるかは、志望する学校とコースによって変わります。


結論:偏差値は「無い」のではなく「算出できない」
先に結論を3行でまとめます。
- **偏差値は学校が出す数字ではありません。**模擬試験を実施する民間業者が、その模試の受験者集団の中での位置として算出する数値です
- 学力検査で合否を決める入試がない学校では、模試の得点と合否の対応データが集まりません。だから数値が作れません
- ただし通信制課程だからといって入試が無いわけではありません。学力検査を課している学校は実在します(後述の都立一橋高等学校)
つまり「通信制高校の偏差値」を探す作業と、「その学校に入れるかどうか」を調べる作業は、別のものです。前者は空振りに終わりますが、後者は募集要項を読めば分かります。
偏差値とは何か——法令にも文部科学省の統計にも出てこない
偏差値とは、あるテストの受験者集団の中で自分の得点がどのあたりに位置するかを示す数値です。学校側が定めた入学基準ではなく、テストを実施した側が受験者の分布から計算するものです。
そのため、偏差値には前提が2つ要ります。ひとつは、その学校を志望する受験生がまとまった人数で模試を受けていること。もうひとつは、その受験生たちの合否結果が業者に集まることです。得点の分布と合否のラインを突き合わせて初めて、「この学校はこのあたり」という数値が置けます。
学力検査による選抜を行わない学校では、この2つ目が成り立ちません。合否が学力検査の点数で決まっていないので、模試の得点と結びつける材料が無いからです。一覧サイトに数字が載っていても、その数字がどの模試の、どの年の、何人分の合否データから出たのかは確かめられません。
裏づけとして、制度側の資料も確認しました。高校の入学者選抜について定める学校教育法・同施行規則、通信制課程について定める高等学校通信教育規程、そして文部科学省の学校基本調査や問題行動・不登校等調査を確認した範囲では、「偏差値」という語は出てきません。偏差値は制度の外側にある民間の指標であり、公的な物差しとして扱われていない、というのが実際のところです。
出典:e-Gov 学校教育法施行規則、e-Gov 学校教育法(いずれも2026年8月13日確認)。

高校入試で学力検査は必須ではない(学校教育法施行規則第90条)
「通信制には入試がない」という話の根拠になっているのが、この条文です。学校教育法施行規則第90条は、高校の入学者選抜について次のように定めています。
第九十条 高等学校の入学は、第七十八条の規定により送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査(以下この条において「学力検査」という。)の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて、校長が許可する。
2 学力検査は、特別の事情のあるときは、行わないことができる。
3 調査書は、特別の事情のあるときは、入学者の選抜のための資料としないことができる。
出典:e-Gov 学校教育法施行規則 第90条(2026年8月13日確認)。
読み取れることは3つです。第一に、入学を許可するのは校長であること。第二に、選抜の資料は「調査書その他必要な書類」と「学力検査の成績等」であり、学力検査だけで決まる仕組みにはなっていないこと。第三に、第2項は学力検査を「行わないことができる」と書いているだけで、行ってはいけないとは書いていないことです。
ここが「入試はない」と言い切れない理由です。条文は学校側の裁量を認めているので、実際の運用は次の3段で理解するのが正確です。
- 法令上、学力検査は行わなくてもよい(施行規則90条2項)
- 実際に、行わない学校が多い(N高等学校のネットコースなど、書類選考のみで選考する学校がある)
- それでも、行う学校は実在する(都立一橋高等学校・都立新宿山吹高等学校の通信制課程)

学力検査を行わない例:N高はコースで入口が変わる
広域通信制の代表例として、N高等学校・S高等学校・R高等学校(角川ドワンゴ学園)の選抜方法を見ます。2027年度生徒募集要項には、出願するコースによって選抜方法が異なると明記されています。
| 出願コース | 選抜方法 | 学力検査に相当するもの |
|---|---|---|
| ネットコース | 書類選考のみ | なし |
| 週5・週3・週1+コース(オンラインキャンパス) | 書類選考のみ | なし |
| 週5・週3・週1+コース(リアルキャンパス) | 筆記試験・面接試験(グループワーク含む) | 筆記試験あり |
同じ学校の同じコースでも、通う先をリアルキャンパスにするかオンラインキャンパスにするかで入試の有無が変わります。公式のよくある質問でも「週5・週3、週1+コースのリアルキャンパスをご希望の方のみ、入学試験があります」「オンラインキャンパスをご希望の方は、入学試験はありません」と説明されています。
筆記試験がある場合の中身は、公式の入学試験ページに次のように示されています。
- 試験時間は筆記試験35分、面接(グループワークを含む)20分程度
- 出題範囲は「筆記試験および面接内容は試験時にお伝えします」=事前には公表されない
- 面接は1グループ単位で実施され、待ち時間を含めると40分程度かかることがある
- 受験方法は**現地受験とオンライン受験(Zoom・録画あり)**から選べる
- 公共交通機関の遅延を含め、試験開始時刻から5分後までに会場へ到着できなかった場合は受験資格が無効になる

費用は、入学検定料5,000円に加えて、募集要項に受験料としてリアルキャンパス15,000円・オンラインキャンパス5,000円が示されています。出願から合否までの流れそのものは、N高の出願手続きと「落ちた」と言われるケースを整理した記事で扱っています。
出典:N高等学校 2027年度生徒募集要項 PDF p.4、N高等学校 入学試験について、N高等学校 週1+コース(いずれも2026年8月13日確認)。

もうひとつ押さえておきたいのが、「書類選考のみ」は「何も見ない」ではないという点です。同じ募集要項の提出書類欄には、新入学の出願者に調査書の提出が求められると書かれています。転入学なら学籍・就学状況証明書や成績・単位修得証明書、編入学なら前籍校の証明書類が必要です。学力検査が無いだけで、中学校や前籍校が作成した書類は選考の資料になっています。
学力検査を行う例:都立一橋高等学校(通信制課程)
東京都立一橋高等学校(通信制課程)の令和8年度第二学期転学・編入学募集の要項には、選考方法が明確に書かれています。
6 選考方法:学力検査に基づき選考します。
学力検査の中身は、現代の国語・言語文化・数学Ⅰ・英語コミュニケーションⅠを総合した学力検査で150点満点、実施は8月25日(火)午前9時〜午前9時45分の45分間です。出題の程度は、第1学年相当が高校1年生1学期終了程度、第2学年相当以上が高校1年生修了程度の基礎的な問題とされています。
そして募集人員が決まっています。第1学年相当が20名、第2学年相当以上が79名(いずれも転学=転入学のみの募集)です。人数の枠がある以上、応募が上回れば選考の結果として入れない人が出る構造になっています。
4月の新入学についても、同校のよくある質問に学力検査の説明があります。
1学年相当と2学年相当以上に分けて学力検査を行います。教科は国語、数学、英語、3教科合わせて60分、1学年相当は中学卒業程度の基礎的な問題です。2学年相当以上は高校1年修了程度の基礎的な問題です。(年度によって変更する場合があります。)
4月募集の予定人数は、1学年相当が160名と案内されています。転編入の45分・150点満点と、4月新入学の3教科60分は別の検査なので、日程と一緒に読み分けてください。

出典:東京都立一橋高等学校(通信制)令和8年度第二学期転学・編入学募集(概要)PDF、同校 入試案内、同校 通信制 よくある質問(いずれも2026年8月13日確認)。年度が変わると募集要項のPDFは差し替えられるため、最新の日程は入試案内のページから確認してください。

過去問が存在する入試だが、Web上には置かれていない
一橋高校は入学案内の配布時に過去問題を配布しています。都立新宿山吹高等学校(通信制課程)も、第二学期の転学・編入学で学力検査(令和8年8月24日)を実施し、検査問題の過去問題を窓口で配布していると案内しています。
「都立 通信制高校 入試問題」で検索してもPDFが見つからないのは、問題が存在しないからではなく、配布の方法が窓口だからです。過去問を見たい場合は、学校説明会や入学案内の配布日程を各校のサイトで確認して足を運ぶ必要があります。
なお、東京都立の通信制課程は一橋・新宿山吹・砂川の3校です。このうち学力検査の実施を公式資料で確認できたのは一橋と新宿山吹で、砂川高校(通信制)は同校サイトが都教育委員会のページへのリンク中心のため、個別の選抜方法までは確認できませんでした。都立だから一律に同じ入試、とは考えないでください。
出典:東京都立新宿山吹高等学校 入試案内、東京都立学校ポータル(いずれも2026年8月13日確認)。
「一橋高校通信制偏差値」で検索しても数字が出てこない理由
一橋高校は学力検査で選考しているので、理屈のうえでは点数が存在します。それでも偏差値が見つからないのは、学校も東京都教育委員会も偏差値を公表していないからです。同校サイトと都教育委員会のサイトを確認した範囲では、偏差値の掲載は見当たりませんでした。
もう1点、応募倍率も同様です。都教育委員会には募集・応募状況を扱うページがありますが、通信制課程の倍率をまとめた資料までは確認できませんでした。**「この学校は偏差値◯◯」「倍率◯倍」と書かれた一覧に当たったら、その数字の出どころが書かれているかを見てください。**出どころの無い数字は、学校側の発表とは別のものです。
代わりに確かめられるのは、募集要項に書いてある内容そのものです。出題教科(国語・数学・英語)、試験時間(45分または60分)、程度(中学卒業程度/高校1年修了程度の基礎的な問題)、募集人員(20名・79名・160名)。偏差値より、この4つのほうが準備の役に立ちます。
通信制高校の入試で落ちることはある?
「落ちる」可能性がどこから生じるかを整理すると、3つに分かれます。
| 落ちうる要因 | 具体例 | どこで確認できるか |
|---|---|---|
| 学力検査で選考している | 都立一橋高校(通信制)は学力検査に基づき選考。新宿山吹も第二学期転編入で学力検査を実施 | 各校の募集要項・入試案内 |
| 募集人員が決まっている | 一橋の第二学期転編入は第1学年相当20名・第2学年相当以上79名、4月の1学年相当は160名の予定 | 募集要項・学校のよくある質問 |
| 筆記試験と面接がある | N高のリアルキャンパス志望者は筆記試験35分+面接(グループワーク含む) | 生徒募集要項・入学試験ページ |
これに加えて、そもそも出願できるかどうかという壁もあります。都立一橋高校の場合、入学資格は「都内に在住または在勤し、在学中も引き続き、在住または在勤すること」です。学力の話をする前に、住んでいる場所や勤務先で対象から外れることがあります。
反対に、学力検査で落ちる心配が要らない入口も残っています。N高のネットコースとオンラインキャンパスは書類選考のみで、学力検査がありません。「偏差値が無いから誰でも入れる」でもなければ、「入試があるから難しい」でもなく、学校とコースごとに入口の形が違う、というのが実態に近い言い方です。
進路の選択肢を入試の方式から並べ直したい場合は、中学3年生から選べる進路を入試の方式ごとに整理した記事が入り口になります。在学中の高校から移る場合は、受け入れの時期そのものが学校ごとに違うため、通信制高校の転入・編入の時期と単位の引き継ぎをまとめた記事もあわせて確認してください。

偏差値の代わりに、何で学校を比べるか
偏差値が使えないぶん、比較の軸は自分で決めることになります。手がかりになるのは、法令が学校に公表を義務づけている情報です。高等学校通信教育規程第14条は、通信制の課程を置く高等学校に、定員・通信教育を行う区域・連携協力施設の名称と位置・教職員数・入学や卒業の状況・費用徴収など9項目の公表を求めています。この9項目が公式サイトで見つかるかどうか自体が比較の軸になるという整理は、通信制高校の選び方を法令の公表義務から組み立てた記事にまとめています。
費用も、偏差値より先に見ておきたい軸です。東京都の通信制課程(都立)の受講料は1単位につき336円、入学料は500円(いずれも令和7年4月1日現在)で、一橋高校は諸経費を含めた年間の目安を「1年間で約3万7千円程度」と案内しています。この金額の大半は教科書・学習書の代金で、授業料そのものではありません。私立の広域通信制との金額差や、公表状況の違いは、通信制高校の学費を公立・私立で比較した記事で確認できます。
出典:東京都教育委員会 都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料等について、東京都立一橋高等学校(通信制)学費・諸経費・補助制度 PDF(いずれも2026年8月13日確認)。
そして卒業までの通い方も、入学の難易より生活に効きます。一橋高校のよくある質問は「登校が全くできない人は、単位を修得できません。したがって、卒業もできません」と明記しており、同校のスクーリングは土曜日に行われます。通い方と単位の取り方の違いは、通信制高校と全日制の違いを在校生・保護者の声から比較した記事で整理しています。

通信制高校の偏差値と入試についてよくある質問
通信制高校に偏差値はありますか。
学校が公表している偏差値はありません。偏差値は模擬試験を実施する民間業者が受験者集団の分布から算出する数値で、学力検査で合否を決める入試が無ければ、模試の得点と合否を突き合わせる材料がありません。一覧サイトに数字が載っていても、それがどの模試の何人分のデータに基づくのかは示されていないことがほとんどです。
通信制高校は入試なしで入れるのですか。
学校によります。学校教育法施行規則第90条第2項は学力検査を「行わないことができる」と定めているだけで、禁じてはいません。東京都立一橋高等学校(通信制課程)は学力検査に基づいて選考しており、都立新宿山吹高等学校も第二学期の転学・編入学で学力検査を実施しています。
書類選考だけの学校なら、出願すれば入れますか。
書類選考は「書類で選考する」という意味で、無条件の入学を意味しません。N高等学校の2027年度生徒募集要項では、新入学の出願者に中学校が作成する調査書の提出が求められています。転入学・編入学の場合も、前籍校が発行する学籍・就学状況証明書や成績・単位修得証明書が必要です。
都立の通信制高校の過去問はどこで手に入りますか。
都立一橋高等学校は入学案内の配布時に過去問題を配布しています。都立新宿山吹高等学校も、学力検査の過去問題を窓口で配布していると案内しています。いずれも窓口での配布なので、配布日程を各校のサイトで確認したうえで足を運ぶ形になります。
N高に偏差値はありますか。
N高等学校が公表している偏差値はありません。ネットコースとオンラインキャンパスは書類選考のみで、学力検査の点数そのものが存在しないためです。ただしリアルキャンパスを希望する場合は筆記試験(35分)と面接があり、出題範囲は事前に公表されていません。
まとめ
- 偏差値は学校が出す数字ではなく、模擬試験を実施する民間業者が算出する数値です。学力検査で合否を決める入試が無い学校では、算出の材料がそろいません
- 学校教育法施行規則第90条第2項は、学力検査を**「行わないことができる」**と定めています。禁じているわけではないので、「通信制に入試はない」とは言い切れません
- N高等学校はコースによって入口が違います。ネットコースとオンラインキャンパスは書類選考のみ、リアルキャンパスは筆記試験35分と面接です
- 都立一橋高等学校(通信制課程)は学力検査に基づいて選考しています。第二学期転編入は国語・数学Ⅰ・英語などを総合した150点満点・45分、4月新入学は3教科合わせて60分です
- 募集人員が決まっている以上、落ちる可能性はゼロではありません。一方で書類選考のみの入口も残っており、学校とコースごとに形が違います
制度も日程も年度ごとに変わります。志望校が決まったら、下記の一次情報と学校の最新の募集要項で確認してください。
出典: e-Gov 学校教育法施行規則/ e-Gov 学校教育法/ N高等学校 2027年度生徒募集要項 PDF/ N高等学校 入学試験について/ 東京都立一橋高等学校(通信制)入試案内/ 東京都立一橋高等学校(通信制)よくある質問/ 東京都立新宿山吹高等学校 入試案内/ 東京都教育委員会 授業料・入学料について (すべて2026年8月13日確認)