通信制高校のデメリットは?中退率3.5%と「卒業率」が見つからない理由
「通信制高校 デメリット」で検索すると、体験談と評判が大量に出てきます。ただ、そこで語られる内容は書き手の状況によって振れ幅が大きく、自分や自分の子に当てはまるのかが判断しづらいのが実情です。
この記事では、感想ではなく公表されている数字と制度の決まりだけでデメリットを組み立てます。使うのは、文部科学省が毎年公表している課程別の中途退学率と、通信制課程の学び方を定義した文部科学省の資料です(2026年8月12日に公表資料を確認しました)。
なお、N高という特定の学校について言われる「やめとけ」の中身を知りたい場合は、N高の卒業率と在校生の声を公式データで検証した記事のほうが直接的です。この記事は、学校名ではなく通信制課程そのものを扱います。
結論
通信制高校のデメリットは実在しますが、その大半は学校の質ではなく仕組みから来るものです。文部科学省は通信制課程を「生徒が自宅等で個別に自学自習する」課程と定義しており、レポート(添削指導)・スクーリング(面接指導)・試験の3つを自分で積み上げる設計になっています。毎日の時間割と声かけが無いぶん、進度の管理が本人と家庭に来ます。
数字で見ると、令和6年度の中途退学率は通信制が3.5%で、全日制の1.0%より高く、定時制の7.4%より低い水準でした。一方、多くの人が探している「卒業率」については、文部科学省の統計に該当する指標が見当たりません。課程どうしを比べたいなら、現状では中途退学率を見るのが最短です。


通信制高校のデメリットは何か?先に3つに整理する
読者が実際に遭遇する不都合は、次の3つに集約できます。いずれも学校ごとの良し悪しではなく、通信制という課程の仕組みから生じるものです。
- 学習の進度が本人と家庭に来る。通信制課程は「自宅等で個別に自学自習する」ことを前提に制度が組まれています
- レポートとスクーリングの量は制度で決まっている。「通信制はラク」とは限らず、卒業に必要な74単位ぶんが積み上がります
- 実際に通う日数は学校ごとに大きく変わる。メディアを使った学習でスクーリングを免除できる範囲が決まっており、その使い方が学校で違うためです
以下、この3つを公表資料の言葉で1つずつ確認します。あわせて、全日制と直接比べられる数少ない公的統計である中途退学率も見ていきます。
全日制と直接比べられる公的統計は「中途退学率」
通信制と全日制を同じ物差しで比べられる公的な数字は、文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」に載っている課程別の中途退学率です。同じ調査・同じ定義で3つの課程が並ぶため、比較の土台にできます。
| 課程 | 中途退学率(令和6年度) | 前年度(令和5年度) |
|---|---|---|
| 全日制 | 1.0% | 1.1% |
| 定時制 | 7.4% | 8.0% |
| 通信制 | 3.5% | 4.0% |
| 高等学校 全体 | 1.4%(44,571人) | 1.5%(46,238人) |
中途退学率の定義は「各区分における在籍者数に占める中途退学者数の割合」です。調査対象は国公私立の高等学校で、調査対象期間は令和6年度間。公表は令和7年10月29日、令和8年1月16日に一部修正が入っています。 出典:文部科学省 令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(PDF)/令和5年度 調査結果(PDF)(いずれも2026年8月12日確認)。
この表を読むときの注意が3つあります。
年度あたりの割合であって、卒業できたかどうかを示す数字ではありません。 中途退学率は在籍者に対するその年度の退学者の比率なので、「通信制は◯%しか卒業できない」と言い換えることはできません。他校へ転学した生徒も含まれます。
通信制の3.5%は定時制の7.4%より低い水準です。 「通信制だけが突出して辞めている」という印象は、3課程を並べると成り立ちません。
この統計の対象には通信制課程も含まれています。 通信制課程が調査対象に加わったのは平成25年度からで、全体の44,571人は3課程の合計です。「全日制を辞めた人が44,571人」ではありません。
なお通信制は前年度の4.0%から3.5%へ下がっていますが、ここで確認できるのは2年ぶんだけです。2点の比較で傾向を読み取ることはできません。

「通信制高校の卒業率」を探しても見つからない理由
「通信制高校 卒業率 文部科学省」という検索語が実在します。ところが、この記事のために学校基本調査と問題行動調査を確認した範囲では、「卒業率」という公的な指標そのものが見当たりませんでした。全国の通信制高校を横並びにした卒業率は、少なくとも一般に公表されている資料からはたどり着けていません。
代わりに公表されているのが、前の節で見た課程別の中途退学率です。したがって「通信制の卒業率は◯%」という横並びの数字は、この記事では出せません。出すとすれば、公表されていない数字を推計で埋めることになります。
一方で、学校が独自に公表する卒業率はあります。ただしその定義は学校ごとにそろっていません。たとえばN高グループは、3年次を迎えた生徒に限った数字、入学年度を分母にした数字、転学・退学者を分母から除いた数字の3つを併記しています。同じ「卒業率」という言葉でも、母数が変わればまったく別の数字になります。数字の定義がどう変わるかは、N高の3つの卒業率を並べて検証した記事で実例を確認できます。
学校のパンフレットで卒業率を見たときは、その数字の分母が何かを先に確認する。これが通信制を比べるうえで最初にやることです。学校の情報公表を軸にした学校の見極め方は、通信制高校と全日制の違いを制度面から比較した記事とあわせて読むと整理しやすくなります。

デメリット1: 学習は「自宅で個別に自学自習」が前提
通信制課程の学び方は、文部科学省の資料に明確に書かれています。
高等学校通信制課程は、勤労青年に高等学校教育の機会を提供するものとして戦後に制度化され、教室授業を中心とする全日制課程・定時制課程とは異なり、通信手段を主体とし、生徒が自宅等で個別に自学自習することとして、添削指導・面接指導・試験の方法により教育を実施している
つまり「自宅で自分で進める」ことが例外ではなく制度の前提です。教育は次の3つの方法で行われます。添削指導は生徒が提出するレポートを教師が添削して返送するもの、面接指導(スクーリング)は対面での指導と生徒同士の関わりを通じて個人差に応じた指導を行うもの、試験は添削指導・面接指導を踏まえて学習状況を評価するものです。 出典:文部科学省 通信制課程における教育課程について(令和8年3月25日・PDF)p.6(2026年8月12日確認)。
ここが読者にとって最初の不都合になります。全日制のように毎日の時間割と教員の声かけで進度が管理される仕組みが無いため、いつ何を進めるかの判断が本人と家庭に残ります。合わない人にははっきり合わない、と言われるのはこの構造が理由です。学校側の質の問題ではありません。
裏を返せば、時間の使い方を自分で決められることが通信制の価値でもあります。その自由を何に使うのかが決まっているかどうかで、同じ仕組みが利点にも負担にもなります。

デメリット2: レポートとスクーリングの量は制度で決まっている
「通信制はラクそう」という印象は、量の面では正確ではありません。1単位あたりに必要な添削指導の回数と面接指導の単位時間は、高等学校学習指導要領で標準が示されています。
| 教科・科目 | 添削指導(回) | 面接指導(単位時間) |
|---|---|---|
| 国語、地理歴史、公民、数学 | 3 | 1 |
| 理科 | 3 | 4 |
| 保健体育のうち「体育」 | 1 | 5 |
| 保健体育のうち「保健」 | 3 | 1 |
| 芸術、外国語 | 3 | 4 |
| 家庭、情報、専門教科・科目 | 各教科・科目の必要に応じて2〜3 | 各教科・科目の必要に応じて2〜8 |
これが1単位あたりの標準で、卒業に必要な単位数は74単位以上です。さらに特別活動が、ホームルーム活動を含めて卒業までに30単位時間以上必要になります。 出典:文部科学省 通信制課程における教育課程について(PDF)p.6(2026年8月12日確認)。
表で目を引くのは体育です。添削指導は1回で済む一方、面接指導は5単位時間と全教科のなかで最も多く設定されています。実技を伴う科目は対面の比重が高く、在宅だけでは完結しない構造になっているわけです。
レポートは提出して終わりではなく、添削されて返り、必要なら書き直します。この往復が74単位ぶん続くこと自体は、通信制を選ぶ時点で織り込んでおいたほうがよい負担です。


デメリット3: 実際に通う日数は学校ごとに大きく変わる
同じ「通信制高校」でも、卒業までに通う日数は学校によってかなり違います。理由は制度側にあります。
文部科学省の資料によると、多様なメディアを利用して行う学習を計画的かつ継続的に取り入れて指導を行った場合、面接指導等の時間数のうち10分の6以内の時間数を免除できます。さらに生徒の実態等を考慮して特に必要がある場合は、複数のメディアを利用することで合わせて10分の8以内まで免除できるとされています。 出典:文部科学省 通信制課程における教育課程について(PDF)p.6(2026年8月12日確認)。
この免除をどこまで使うかは学校の設計次第です。上限まで使う学校では登校が年に数日で済み、あまり使わない学校では週に何度か通うことになります。「通信制だから通わない」とは限らないのはこのためです。
読者が実際に困るのは、入学してから「思っていたより通う」と気づく場面です。防ぐ方法は1つで、出願前に卒業までに、いつ・どこへ・何日行くのかを募集要項で確認しておくことです。学校ごとの実例としては、N高のスクーリング日数と会場を公式資料から整理した記事が分かりやすい形になっています。年度の途中から入る場合は日数の前提が変わることもあり、時期の考え方は通信制高校の転入時期と単位の引き継ぎをまとめた記事で確認できます。
なお免除の上限が10分の8である以上、制度としてスクーリングがゼロになることはありません。完全に在宅で完結する高校卒業の道を探しているなら、そもそも別の制度(高卒認定試験の仕組みを整理した記事)を検討したほうが話が早い場面もあります。


「人生終わり」と言われるが、公表データはどう見えるか
「通信制高校 人生終わり」という強い言葉が検索されています。これを肯定も否定もせずに、公表されている数字だけを置きます。
まず在籍者数です。文部科学省の資料に載っている学校基本調査ベースの数字では、通信制課程の生徒数は令和5年度が264,974人、令和6年度が290,087人、令和7年度が305,197人と推移しています。3年でおよそ4万人増えた計算です(この数には他からの併修者は含まれていません)。同じ期間、全日制・定時制は2,918,501人から2,873,619人へ減っています。 出典:文部科学省 通信制課程における教育課程について(PDF)p.4(2026年8月12日確認)。
次に在籍している生徒の背景です。令和5年度の文部科学省委託調査によると、小・中学校および前籍校で不登校経験がある生徒の割合は、狭域・広域のいずれの通信制でも6割を超えています。文部科学省自身も「通信制高等学校の在籍生徒に占める就業者の割合が減少する一方で、小・中学校及び前籍校において不登校経験を有する生徒の割合が最も多く、生徒の実態が変容している状況にある」と整理しています。 出典:文部科学省 通信制課程における教育課程について(PDF)p.5(2026年8月12日確認)。
ここで気をつけたいのは、この6割超という数字は在籍者の背景であって、学校の質でも卒業後の結果でもないことです。不登校経験者が多いから学力が低い、といった因果を読み取ることはできません。中学校時点で全日制以外の道を考えている場合の選択肢は、不登校の中学生の進路をまとめた記事で整理しています。
卒業後の進路については、正直に書けることが限られます。課程別(全日制・定時制・通信制)の進学率や就職率を示す公的統計に、この記事の調査範囲では到達できませんでした。したがって「通信制の大学進学率は◯%」という数字はここでは扱いません。個別の学校が公表している合格実績は学校単位の数字であり、通信制全体には広げられません(実例と読み方はN高の大学進学実績を公式情報から検証した記事)。仮に途中で辞めることになった場合にどんな選択肢があるかは、高校中退のその後を統計と制度で整理した記事にまとめています。

デメリットには数えないが、確認できなかったこと
デメリットの数を増やすために「情報が出てこない」ことを不都合として並べるのは誠実ではないので、分けて書きます。この記事の調査範囲で公表資料に到達できなかったのは、次の3点です。
- 通信制高校の卒業生の進路の内訳(課程別の進学率・就職率)
- 「通信制だと就職で不利になるか」を示す公的なデータ
- 課程別の中途退学率の長期推移(確認できたのは令和5年度と令和6年度の2年ぶん)
これらは「デメリットが無い」ことの証明でも「ある」ことの証明でもありません。判断材料が公表されていないという状態です。数字が無い領域について断定している情報を見かけたら、その根拠がどこにあるのかを確かめたほうがよいでしょう。
デメリットが重く出やすい人・軽く済みやすい人
同じ仕組みでも、置かれている状況で負担の重さが変わります。
重く出やすいケース
- 決まった時間割と大人の声かけが無いと学習が止まりやすいタイプ
- スクーリング会場までの移動そのものが負担になる地域・体調の状況
- 学校の教材だけで大学受験を終わらせたいと考えている場合(塾や予備校を併用する前提なら、高校進学にかかるお金を費目ごとに整理した記事で総額の見通しを立てておくと安全です)
軽く済みやすいケース
- 学習以外に時間を使いたい目的(制作・競技・就労・療養)がはっきりしている
- 進度を一緒に見てくれる大人が家庭や学校の外にいる
- 対面の集団生活そのものが負担になっていて、そこから離れることが目的になっている
学校選びの段階では、学費の内訳も判断材料になります。公立と私立で学費の決まり方がどう違うかは、通信制高校の学費を公立・私立で比較した記事にまとめました。
よくある質問
通信制高校の卒業率はどこで公表されていますか? 学校基本調査と問題行動調査を確認した範囲では、文部科学省の統計に「卒業率」という指標は見当たりませんでした。公表されているのは課程別の中途退学率で、令和6年度は通信制3.5%・全日制1.0%・定時制7.4%です。学校が独自に公表する卒業率は分母の取り方が学校ごとに違うため、比べる前に定義を確認してください。
通信制高校は全日制より辞める人が多いのですか? 令和6年度の中途退学率で見ると、通信制は3.5%で全日制の1.0%より高い水準です。ただし同じ調査で定時制は7.4%なので、通信制だけが高いわけではありません。中途退学率は年度あたりの割合で、卒業できるかどうかを示す数字ではない点にも注意が必要です。
通信制高校を選ぶと就職で不利になりますか? 有利・不利を示す公的なデータには、この記事の調査範囲では到達できませんでした。課程別の就職状況を示す統計が公表されていないため、この記事では断定しません。判断材料としては、志望する学校が公表している進路状況の資料を個別に確認する方法があります。
家から一歩も出ずに卒業できますか? 制度としては難しいと考えられます。多様なメディアを使った学習で面接指導の時間数を免除できますが、上限は10分の6以内、特に必要がある場合でも複数のメディアを使って合わせて10分の8以内と定められています。免除を使い切っても、面接指導の時間がゼロになる設計にはなっていません。
レポートはどれくらいの量になりますか? 学習指導要領の標準では、1単位あたりの添削指導が国語・地理歴史・公民・数学・理科・芸術・外国語などで3回、体育で1回です。卒業には74単位以上が必要なので、この回数が科目数と単位数のぶんだけ積み上がります。実際の課題量は学校の設計で変わるため、募集要項で確認してください。
まとめ
- 通信制高校のデメリットの中心は学校の質ではなく、自宅での自学自習を前提にした仕組みにある
- 全日制と直接比べられる公的統計は課程別の中途退学率。令和6年度は通信制3.5%で、全日制1.0%より高く定時制7.4%より低い
- 検索されている「卒業率」は、文部科学省の統計には該当する指標が見当たらない。学校が出す卒業率は分母を確認してから読む
- レポートと面接指導の量は制度で決まっており、卒業には74単位以上が要る。体育は面接指導が5単位時間で最も多い
- 実際に通う日数は、メディア学習による免除(10分の6以内、特に必要な場合は合わせて10分の8以内)の使い方で学校ごとに変わる
- 課程別の進学率・就職率は公表資料に到達できなかったため、この記事では扱っていない
通信制を選ぶかどうかの判断は、「辞める人の割合」よりも、自由になる時間を何に使うのかが決まっているかに寄ります。ほかのテーマから見比べたい場合は、通信制高校をテーマにした記事の一覧から学費・入試・進路の順に読み進められます。
この記事の数値はすべて2026年8月12日時点で公表されていた資料に基づいています。中途退学率は毎年更新され、制度の運用も見直されるため、出願前に最新の公表資料と各校の募集要項で確認してください。
出典
- 文部科学省 令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(PDF)(中途退学者数44,571人・中途退学率1.4%・調査の公表日)
- 文部科学省 令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(PDF)(前年度の課程別中途退学率・中途退学率の定義)
- 文部科学省 通信制課程における教育課程について(令和8年3月25日・PDF)(通信制課程の定義・添削指導と面接指導の標準・メディア利用による免除・生徒数の推移・不登校経験のある生徒の割合)